「いつも急ですみません。接待に出なきゃいけなくなって」


夜のお仕事のようだ。


「失礼します」


部屋の中に案内される。
フローリングで、突き当たりにリビングが見えた。


小さな廊下には壁にコルクボードが取り付けられ、風景の絵はがきやメッセージカードが無造作に飾られている。


キッチンは、あまり使われている形跡もないほどすっきりして物が少ない。


パステルカラーで統一されたリビングの片隅に、ゲージに入れられたウサギがいた。


「じろじろ見ない」


「……すいません」


睨まれて小さくなる。


「女性の方がいてくださると安心ですね。具合が悪くてお休みしてらしたみたいだから、お願いできないんじゃないかと心配してたんですよ」


「お気遣い、ありがとうございます。彼女に何なりとお申し付けください」


ここでも一方的に話を進められる。


「この子のことはもうご存知よね??じゃあ、お願いします」


「お任せください。ごゆっくり。お気をつけて行ってらしてください」


鍵を預けて出掛けていった。