「あのっ、私、もう帰りますので、荷物だけ取りに行かせていただいて」


エレベーターに乗って。


「何の話ですか」


「えっ!?だって、奥様、いらっしゃるんでしょう??櫻さんて。あまりお邪魔してはご迷惑ですし」


「雇います」


「え"っ」


「四の五の言わせませんよ。今日から僕、ペットシッター董坂櫻の僕(シモベ)になってもらいます。帰ってこないから、どんだけキツかったことか」


ポン、と音がして、静かに扉が開く。もう7階に着いた。


振り向き様に眼鏡を直すと、口角を上げてニヤリとほくそ笑む。


「はい!?」