青空に映える白雲が目に入る。

ぷっくりと表面張力を保っている水滴が桜の花弁から溢れて落ちた。


「花弁の落ちる先、天か地か。賭けようか」


私の方から二択問題を出したのはこれが初めてかもしれない。


「賭けにならないな。落ちる先は地面だろ」


「じゃあ私は天に賭けるよ。ずっと風に乗ってどこまでも行けば地面には落ちないよ」


「相変わらず、意見が合わないな」


目尻が下がり、柔らかく表情を緩める。
多分彼のこういう表情、だ。私が見ていたかったもの。


薄紅色で織り成される花束の中から、ひとひら溢れた。

それが私と目線を合わせたのを見届けてから、隣にいる彼に瞳を合わせる。


風をかける空飛ぶ絨毯みたいな桜、私の知らないどこかへ行ってしまえ。

大地よりも、もっと空高く永遠にどこまでも辿って。


「ねえ、」


透けた黒い瞳に心が満たされる。

哀しい、淋しい、恋しい、切ない、苦しい、嬉しい。


どれも、違う。


彼に当てはまるのは多分


____愛しいだ。



「初めましてユキ」


「ああ。こんにちは、サクラ」


君と私は季節の狭間へと舞い落ちる。