本命とは言ってない。





「ん」


清々しい朝、人が多い昇降口。


「お、おはよ、芹くん」

「おはよ」


手を私の前に差し出して現れた芹くんは今日も黒髪が輝いている。


「えっと、なにかなその手」

「渡すものあるでしょ?」

「ないよ」


私は苦笑する。

ドキドキと控えめに心臓が鳴り出す。

顔赤くなってないかな、声震えてないかな。


「あいつにはあげるのに?」

「え?」

「……なんでもない、ねえ今日一緒帰ろうよ」


いきなりの芹くんの言葉。

一緒に帰る?どういうこと?


「えっ」

「先約あるならいいけど」

「ないです!」


慌てて返したら芹くんは眉を寄せて笑った。

バレンタインフィルターかかっちゃってるよ…。

今日も今日とてかっこいい芹くん。