今も変わってないこの関係は、時にひどく私を焦らせる。

例えば芹くんが告白されている時。

顔を赤くして必死に言葉を紡ぐ女子生徒を見て、私は心の奥がチリチリと焼ける痛みを覚える。

芹くんは焦りもせず照れもせず、淡々と彼女に言葉を返す。

あの顔を崩すのは誰か、考えるだけで苦しい。

だから崩したいと思った。

他の子より芹くんに少し近い位置にいる私なら、少しは揺らいでくれるかもしれないと期待した。


去年のバレンタイン、私は芹くんにチョコを作った。

放課後残ってもらって、その時に渡そうと。

もし今日関係が変わるのなら、と心臓がうるさく響いていたのをまだ覚えている。


「緑川さん」


寒い教室にふたりきり。

少し口角を上げた芹くんは、バレンタインフィルターがかかっていたのからか、いつもより格好よく見えた。うそ、いつも格好いい。


「ごめん、残ってもらって」

「全然いいよ」

「そ、それで、あの」

せっかく可愛くしたラッピング、多分ぐちゃぐちゃだ。

震える手をなんとか芹くんの前にだして、私は顔を下げた。


「……これ、チョコ?」

「う、うん」


しばらく無言だった芹くんは、そっと私の手からチョコを受け取ってくれた。


「ふふ、ありがと」


芹くんは嬉しそうに微笑んだ。

うそ、うそ…!これは脈あり…!?


「それであの」

「友チョコってやつ?緑川さん料理上手そうだから美味しいだろうね、ありがと」






え?