本命とは言ってない。





「……えっ」

「まだ渡してくれないの?」


まだチョコは私の手の中。

呆然と立ち尽くしている私をみてまた眉を下げて笑った。


「それ友チョコでしょ」

「……」

「俺は本命チョコがほしい」


手の中のチョコを指さして、ゆるりと口角を上げる芹くん。



「え、だって友チョコって」

「ちょっといじわるした、涼一くんに嫉妬して」

「し、嫉妬!?」

「だっていつまでたっても告白してくれないんだもん、待ち遠しくていじわるもしたくなるよ」


それが逆効果だったけど、と言って私の腕を優しく掴む。



そしてそのままぐっと引き寄せられた。



「ひえっ」

「去年も今年もこんなことしてごめんね、あいつに先にチョコ渡すんだもん、そりゃむかつくでしょ」

「せ、芹くん」

「好きだよ、ずっと前から好きだったよ」



耳元で寄せられたその言葉に顔が熱くなるのがわかる。

私と芹くんの心臓の音が重なって、心地よく感じた。



「もうチョコもらっていい?」

「あ、うん、どうぞ」

「本命いただき」




にこっと笑ったその顔は、私がずっと欲しかったその顔で。




「……っ本命とは言ってない!」

「あれ、まだそんな強がるの」



腕の中で言われても説得力ないなあって言うから、私は仕返しに思い切り抱きついてやった。










Happy Valentine!