本命とは言ってない。





「“友チョコ”、ね」

「……」


だめだ。

勇気を出そうと思ってたのに。

今年こそ、はっきり言おうと思ってたのに。

いざ言葉に出すと心が苦しい。

目が熱くなって視界がぼやける。




「……ふは」

「え?」

「泣かないでよ」



走って逃げ出そうと思ったら、目の前には顔をクシャクシャにして笑う芹くんがいる。


……なんで、笑ってるの?




「あー降参、俺の負け」

「え?」

「ごめんね、いじめすぎた」



頭に優しく置かれる手。

そのままゆるりと髪をなでて、私の頬に移動する。

胸から出てきそうなくらい高鳴る心臓が、嫌でもこの状況を教えてくれた。



「かわいいなあもう」

「えっと……」

「はやくちょうだい、本命チョコ」