本命とは言ってない。





「あいつにチョコ渡したの?」

「涼一?渡したよ」


二人で帰る帰り道。

心臓の音がうるさすぎて、芹くんの声が聞こえない。


「……本命?」


ぼそっと芹くんが口に出す。


「ちがうよ」

「そう」


ちらりと横顔を盗み見たら、芹くんはなんともない顔をしていた。

少しでも期待したら負け。


「俺もほしいなあ、その友チョコ」

「……」



ほらきた。



また牽制。



友チョコ以外の気持ちで渡したらきっとダメ。



甘くない。



バレンタインは全然甘くない。



むしろビターだよ。




「……はい」

「えっあるの!」


カバンから出したラッピングに包まれたチョコ。


……私は勇気が出なかった。