「あげないけど」

「は?」



眉を寄せて君は言う。

私の一言だけでかなり不機嫌になったし、大きな目は細められている。



「なんで」

「なんでって…」



そういうとこよ、そういうとこ。

私鈍感女子じゃないの。

君がいくら天然系で突っ走ってるとしても。

私は勘違いしてしまうんだよ。



「バレンタインって知ってる?」

「知ってるよ、チョコの日だろ」

「好きな人に渡すの」

「……」



さらにむすっとした目の前の彼。


少し長い真っ直ぐな黒髪。

整った顔立ちはまだどこかあどけない。



芹くん、私の好きな人。