「もっと早く渡せばよかったんだけどなかなかタイミングなくて…ごめんな」

 タイミングも何もいつでも渡せる距離だったけどな…なんて思いながら私は口には出さなかった。

 「ありがとう」

 私がわざとらしい笑顔で答える。

 「あのさ、あいつ、宮坂さんの事いい人だって言ってたよ」

 え?私その人と話した事あったんだ…。

 感謝されるような事したっけな。

 「学校の前でぶつかった時、自分の事よりあいつの事心配してくれたんだろ?」

 え、

 え!?

 まさか…
 
 「…高野くんの彼女って…桜陽学園の子?!」

 まさか、そんな事が

 「そうだよ、木下琉花」

 あるなんて。