「高野くん」
「悪いけどちょっと廊下いい?」
え、何。
何この状況。
私の頭の中はパニックを起こしていた。
「ちょっと瑞希、後で詳しく聞かせてよね!」
小声で囁いてくる彩の声が私には聞こえなかった。
それでも私と高野くんは寒い廊下に出た。
高野くんは窓にもたれ掛かる。
そして私の目を見て、口角を少し上げて口を開いた。
「…何をそんなにおどおどしてるの?」
え、私、今そんなに落ち着きないのかな…。
そう言われて顔が熱くなった。
「あのさ、これ」
彼が私に差し出したのは
「…生徒手帳?」
「宮坂さんのだよ、これ」
うそ、なんで。私いつの間に落としたんだろう…。
「…拾ってくれたの?」
「うん、まぁ拾ったのは俺じゃなくて彼女なんだけど」
スラッと言われたその一言で私は現実を突きつけられた。
"彼女"
ズキっと胸が痛んだ。
この人には付き合ってる人がいるんだ。

