「やっとお弁当食べれるよー」
その日は午前中の授業が長引いて彩は少し不機嫌だった。
「あのおばさん、国語の先生なのに説明下手すぎ」
「まぁ…そんな時もあるよ」
なんだか彩の視線が冷たいけれど、無視してお弁当を広げた。
いつも思うけど彩のお弁当はかなり凝って作られている。彩のお母さんは専業主婦だから料理は得意中の得意なんだろう。
それに比べて私のお弁当は冷凍食品ばかりだ。けれど卵焼きだけは母が作ってくれた。どんなに忙しくても「これだけはやらせてよ」と毎日作ってくれるお弁当。
私は幸せ者だ。家族がたったの二人だって幸せだ。だからこそ母にはいつか少しでもラクをさせてあげたいな、そう思いながら卵焼きに箸を伸ばしかけた時、
「宮坂さん」
この声にドキッとしてしまった。
振り返らなくても分かる。
この声の主、

