「そういう訳じゃねーけど、ただ、周りに気を使って自分の感情を押し殺してるっていうかさ」
なによ、それ…
「宮坂さんは覚えてないだろうけど、1年の時に吉岡先生が新婚旅行で京都で八つ橋買ってきてくれてさ、けど先生の数え間違えでちょうど一個足りなくて、宮坂さんが最後の一つを他の奴に譲ってたんだ。
俺それ見てさ、あぁ、食べたかっただろうなって思ってたんだ」
そんな事もあったかな。
確かあの時は席順で八つ橋回してて、私の後ろの子が一番最後で、でも八つ橋は最後の一つしかなくて、あげたんだっけ。
「でもそれは、仕方ないじゃん?私そんなに食べ物に関して恨みとか持ってないから、気にしてなかったよ」
「そんな事ねーよ、だってその日は宮坂さん、家に弁当忘れて何も食べてなかったんだよ」
「え…」
…そうだ、その日は昼ごはん食べてなくて、先生のお土産に感謝しようとしてたんだった。

