「……ほんとに沢山あるわね」
そうして連れていかれた屋敷の二階の一室。その部屋はどうやら、カラスが寝床にしている場所らしい。足場がないほどに積まれたカラス曰くオタカラの山を見て、彼女は呆れと感心の間のような声をあげた。
そこには様々なものがあった。ボタンのようなガラクタから、正体不明の金色の像まで、とにかくたくさんの物が集められている。
「……あら?この像」
その金色の像に、彼女は見覚えがあった。それもそのはずだ、彼女はこれを、一昨日の夜からもう三度も見ているのだから。
そう、それは、あの供物の台に置かれていたものだった。それを見てようやく、昨日の所とはあの供物が落ちていた場所だと理解する。
「……このへん、全部あそこから取ってきたの?」
ガラクタはその前から集めていた物だろうけど、像の周りにある使えそうなものは恐らく同じように供物として落とされたものだろう。どうやらカラスはこの屋敷から何往復もして、ここまで集めてきたらしい。
「すごい?すごい?」
大きく頷いたカラスは、やはり誇らしげにエレノアに訊ねてくる。彼女は微妙な心情で頷いた。
「……そ、そう……ね」
そう言ってやると、カラスはぱあと目を輝かせる。収集癖には何とも言えないが、何往復もしてここまで集めてくるのは確かにすごい。
エレノアはカラスの運んだ供物の山に目を向ける。ここにあるものは多少破損はしていても、人間から捧げられた供物であるはず。何か役に立ちそうなものはないだろうか、と思ったのだ。
「……あ!」
その中に、思わぬもの──見覚えのありすぎるものを見つけて、彼女は思わず大きな声を出す。そして、急いで駆け寄って山の中からそれを引っ張り出した。
「これ、私の……!」
エレノアが見つけたもの、それは彼女の全財産が詰まった、町を出る時に持っていた鞄だった。
確か、生贄の少女を見つけた時に供物の傍に放り出してきたのだが、誰かが供物の山に加えておいてくれたらしい。こんな形で戻ってくるとは思っていなかった。


