恐る恐るというように、セレステが訊ねる。エレノアは少し考えて、その顎を引いた。
「そうね、優しいと思うわ。考えていることがすぐ表情に出てしまう、不器用で素直なひとよ」
エレノアの目から見た魔物の姿を、ありのまま語る。その横顔をじっと見ていたセレステは、しばらくして安心したように笑みを浮かべた。
「そう、なんですね。伝わりました。その方は、エレノアさんを大事にしてくれているんですね」
「……大事に……」
予想外の言葉に少し驚いて、エレノアは少女の言葉を反芻した。大事に、されている。そうなのだろうか。
彼女は今朝のやりとりを思い出す。過保護なのね、とからかったエレノアに、彼は真面目そのものの表情でで、「自分の番を心配しない生き物はいない」と言った。彼はあの通り、口先だけの嘘を並べられるひとではないから、きっとそれは本心なのだと思う。もしかしたら、律儀な彼のことだから、自分の嫁としてそばに置いてしまった彼女への義理としてそうしているだけなのかもしれないけれど。
けれど、例え義理だったとしても。
(大事に……だなんて、初めてだから、何だか変な気分だわ。そうなのね、私は、大事にされていたのね……)
今まで十年近く、ずっと一人だけで生きてきた彼女は、そう考えてしまうとどうにも落ち着かなくて。
「……良かったです。エレノアさんが、幸せそうで」
そんな彼女に、セレステは微笑みかける。エレノアはびっくりして、少女を見つめ返した。
「幸せ……そうに、見える?」
無縁だとずっと思っていた言葉がまさか自分に使われるとは思っていなくて、ついそう聞き返した。少女は間を置かず、大きく頷く。
「はい。何て言うか、表情が優しくなったんです。初めて会った時のエレノアさん、何だかずっと、寂しそうだったから」
「……!」
少女の言葉に、エレノアは目を見開く。他人の目からそう映っていただなんて。


