「……本当に、良かったわね」
しみじみとエレノアは言う。この少女と入れ替わって良かったと、彼女は心から思っていた。もしセレステが生贄となっていたら、恐らくは彼女のように生きていくことは出来なかっただろう。
孤児として教会で育った、という少女の生い立ちは、エレノアにも通じるところがあった。常に何かに怯える人間達とは違う真っ直ぐな目をした少女を、エレノアは好いていた。エレノアほどのしたたかさはもたず、けれど彼女よりも何倍も強い生への願望をもつセレステという少女に、幸せになって欲しかったのだ。
「はい。……エレノアさん、本当にありがとうございました」
「ううん、本当に気にしないで。ほら、こうして私もぴんぴんしてるんだから」
これまでにももう何度も頭を下げ倒しているセレステに、エレノアは両手を振って言う。頭を上げて、と三度ほど言ったところで、ようやくセレステはその通りにしてくれた。
「……エレノアさんは、その、どうだったんですか?」
少し躊躇いがちに、今度は少女が訊ねてくる。エレノアは少し迷ってから口を開いた。
「うん、奇遇なことにね、私もあなたと同じで嫁になったの。もちろん、魔物のね」
「……え?」
ほんの少し悪戯心を働かせてそう言うと、案の定セレステはぽかんとした表情を浮かべた。それから、その水色の瞳を大きく見開いて、驚きを素直に表す。
「ま、魔物の嫁って……!本当ですか!?」
「ふふ、そうなのよ。ああ、安心して、勿論脅されてとかじゃないわよ。むしろあの人のほうが渋ってたくらいかも」
その時のことを思い出してふふっと笑うエレノアを、少女はまだ驚いたような表情で見つめている。けれど、本当に深刻ではないことは伝わったのか、緊張したような面持ちは消えていた。
「……優しい、方なんですか?」


