「…そっか。そうだよね。」 少しの間の後、彼は宙を仰いで吐息混じりに言う。 傷付けてない。大丈夫。 大丈夫… 「…ごめんなさい。」 私は俯いたまま独り言みたいな小さな声で言った。 (大丈夫…)と思っていたけど、思わず口をついて出た言葉。 「俺こそ、ごめんね。」 楢崎さんが言う。 その穏やかな優しい声にはっとして、私はそっと顔を上げる。 その思いの外柔らかな眼差しと切なげな微笑みに胸が痛む。 (私、あなたのこと振ったのに… 疑って振ったのに どうしてそんなに優しい顔をするの…?)