「白鳥さん!」



階段を上り切った所で、パスケースを手に改札口に向かう君を見つける。

その後ろ姿に呼び掛けると、君は立ち止まってゆっくりと振り返る。



俺は不躾に君の瞳が見える距離まで駆け寄った。



「ごめん…



でもやっぱり

「あなたのこと分からないから」

なんて理由…納得できない。」



「……」



「君は俺のこと、何も知らない。



君が思うよりもずっと、

君が考えてるよりも本気で、

君が想像するよりも前から

君のことが好きだとか。



そんなことも君は知らない。」



君はただただ驚いたように、つややかな唇を小さく開いたまま、
深い色の美しい瞳で俺をじっと見つめる。



「そんなことも知らないで

「分からないからごめんなさい。」なんて、

納得いかねぇよ。」