県大会─

国際大会にも対応した広い陸上競技場。

そのフィールドで俺は跳んでいた、この夏まで。



緊張はした、勿論。

でもあの緊張感、高揚感は別格。

応援に来てくれた友達や家族、陸上部のチームメイトたちが手拍子をしてくれる。

助走から踏み切ると刹那、翼を広げたように身体がふわりと舞うあの感覚。



最高の跳躍ができたと思っても、他がもっと跳ぶこともある。

勝てるとは限らない勝負の世界。

それでも俺は勝ち負けとは関係なくハイジャンが好きだった。

ただ、自ら意思をもって翼を広げる、あの瞬間が好きだった。



でも恋は…?



恋は…



恋とハイジャンは、比べる対象じゃないから。



でも。



彼女のことも「好きだ」─



「好き」という感情は同じ。



君に逢う時の俺はもしかすると。



翼を広げたい衝動に駆られているのかもしれない─