カーテンを開けベランダに出る。

冬の冷たい空気に包まれる。



「寒…」



空にはオリオン座の三つ星。1等星がひとつ、ふたつ…

傍にはシリウスが煌めいている。



決して満天とは言えない星空に彼女を思い描く。



「……」



彼女の名前を、呟きたかった。

でも名前も知らない俺はそれも出来なくて…



切なさに眼を閉じる。

出逢ってから今日までの彼女の姿がフラッシュバックする。



いつも目映い朝の光を浴びて一際美しい白肌の横顔を。

テキストの文字を追う濃い睫毛に縁取られた大きな瞳を。

時折接近し過ぎて俺を動揺させるふんわりと薔薇色の頬と唇を。