間違い



「良い?まずあんたがやるのは、花村とのコミュニケーション!


人との関係はそれなしには築けない!」


「うん…」


先の事を心配しても仕方がない。


ようやくそう思った私は、とりあえず花村くんに好きになってもらうべく頑張ることにした。


「じゃあ、とりあえず挨拶からいってみよう。」


「え?!」


咲希に引っ張られて廊下へ連れ出される私。


バランスを崩しつつ、廊下へ出るとダルそうに歩いてくる花村くんを発見。


今日も驚くほど格好良い。


そして、そんな花村くんをハートの目で見つめる女子。


私は今、そんな人の彼女なんだ…


全くもって実感がないけど。


「ほら、彼女なんだから挨拶してくる。」


少し強めに背中を押され、私は花村くんの目の前に出る形に。


突然現れた私を不思議そうな目で見る。


「鈴原さん?」


「あ、お、おはよう…」


名前を覚えてくれていたことに喜びながら、なんとか挨拶をした。


「うん、おはよう。」


とびきりの笑顔で返してくれる。


「あ、それじゃ…あの…また!」


周りからの視線と、花村くんの笑顔に耐えられなかった私は逃走。


咲希の元へと走った。


「あ、挨拶してきた!!


神々しい笑顔で返してくれた!!」


「そ、そう、良かったじゃん。」


昨日までは存在も知られていなかったであろう私。


それが今では挨拶をすることができて、しかも名前まで…


なんて幸せなんだろう。


天にも昇る気持ちとはまさにこの事だ。


「それで、その後は?」


「…ん、その後?」


「うん、挨拶した後は?」


「咲希のところに…来たけど?」


咲希の質問の意図がよくわからなくて、首をかしげる。


「デートのひとつでも誘ってこい!」


「えぇ!無理だよ!


挨拶するだけでもいっぱいいっぱいなんだよ?!」


花村くんだって、私にデートに誘われたって迷惑に決まっている。


それに、あの場で誘えば確実に女子からの反感をかったはずだ。


「まぁ、挨拶しただけでもいいか。


杏菜、あんたから攻めていかないと、あいつは絶対おとせないと思う。」


「咲希、怖いよ…?


てゆうか、なんでそう思うの?」


「それは…私の彼氏情報で…」


咲希が少し口ごもる。


咲希の彼氏と言えば、確か花村くんの友達。


なるほど、だからか。


「どんなに綺麗でも可愛くても、花村からは絶対に誘わないらしいの。


私からしたらどんだけ上からって感じだけど。


正直杏菜と花村が付き合うなんて嫌だよ?


アイツの中学時代は本当に最悪だし。」


そう、咲希と花村くんは同じ中学出身。


咲希いわく、あの頃の花村くんは最悪だったらしい。


モテることを鼻にかけて、大勢の女子と付き合い、その女子がもめるのを見て楽しんでいたそう。


本命は決して作らず、女心を弄ぶ。


咲希はそれが許せないと言っていた。


「過去なんて知らないー!


終わりよければすべてよしだよ!」


「杏菜、真面目に、心配なの…


あんたがアイツに泣かされないか、傷つけられないか。


私はそういう子をたくさん見てきたし。」


「大丈夫だって。


ほら、私、タフだけが取り柄じゃん?」


「確かに、杏菜は図太いもんね。」


「なんで悪意のある言い方にするかな。」


咲希は花村くんの事を好ましく思っていない。


だから私が花村くんを好きだと言うと、何度も止められた。


咲希なりに私の事を心配してくれていて、嬉しい。


だけど、