―ガチャ―
そんなあたしの重たい気持ちを背負ったまま、
彼の入っていった寝室のドアを開ける。
そこには大きなベッドに横になり、綺麗な顔で眠ってる彼がいた。
少しずつ彼に近寄ってみるあたし。
顔を見ると何だか触れたくて触れたくて…
布団から出ている彼の長い手にあたしの手をゆっくりと持っていく。
後、少しで触れられる。
彼の体温を感じる事が出来る。
そう思いながらあたしの手をゆっくり、ゆっくりと彼の手へと近付ける。
もう少し…もう少し…
「……ぁっ…」
あたしの微かに出た声と、あたしの手が止まった。
もう少しで彼に触れられる所で…
さっきのCDの音楽があたしの頭の中に入ってきた。
あの切ない歌詞とメロディーのラブソング。
今のあたしには辛くて聞きたくも無い曲。
そんな曲があたしの脳裏を行ったり来たりしていて…
あたしはこんなにも近くにある彼の手に触れる事は出来なかった。
曲ごときであたしの気持ちと行動を苦しめた。

