「う、ん…」
涙を拭いながら加奈子に返事をして電話を切った。
加奈子にまた、心配かけちゃったな…
はぁ…
あたしったら何で泣いてるんだろ…
今わかった事じゃないのに…
麻生 健永に好きな人が居る事くらい…
わかっていたのに。
たぶん…舞い上がってたのかも。
少し自惚れた…
あたしを同級生だと言った事も…
ゲーセンに無理矢理連れて行かれた事も…
家まで送って貰った事も…
こうして家に上がらせて貰った事も…
なんか特別…みたいな…
あたしだけ…みたいな…
好きな人がもしあたしだったら…
みたいな。
勘違いにも程がある。
あの突然再会した夜に、好きな人には勝てないって聞いていたのに…
彼の行動にいちいち胸を高らめて、バカみたい。
好きになって…バカみたい。
彼の大切なモノを目の前にして…
あたしの気持ちを攻めるしか出来なかった。
このCDの想い出の中には彼とその想い人にしかいない。
そこに、あたしはいないんだ…。

