あたしの手の上に乗せられたホッカイロ。
あたしが腰に貼っていたホッカイロ。
すごく恥かしかったけど、受け取ったホッカイロはいつも以上に凄く凄く暖かくて
あたしの気持ちがそれだけでいっぱいになった。
もう、心の恋と言う部分があるなら満タンになってしまっていただろう。
彼の初めて聞く声…
彼のあたしに向けられた笑顔…
彼のホッカイロ越しにあった体温。
そのすべてがなんだか愛しく思えて
「…ありがとう」
頭を深く下げ、泣きそうな顔を必死に隠した。
恋って凄い。
こんな事で嬉しくなって涙が出てしまいそうになるんだもん。
彼を想っての嬉し涙。
嬉しい時は笑顔。
悲しい時は涙。
そう思っていたのに…
あたしの彼を想う気持ちがそれを屈した。
すべて初めての事だから…
少しこんな感情にも戸惑ってしまったんだ。
「もう落とすなよ…恥かしいから」
どこの誰かかわからないあたしに、
優しく微笑んで…
あたしに背中を向け歩き出した彼の後ろ姿を…
入学式以来、ずっと見つめていた。

