彼の唇を感じてみたい。


どうせ、サヨナラするんだから…


最後に味わってみたい。


初恋の人の…


大好きな人の…


唇を…




近付いてくる彼にあたしはそっと見つめ合っていた瞳を閉じた。




“女は皆、一緒”




ドンッ―



「嫌っ!!」



瞳を閉じた瞬間、彼があたしに過去に言った事が頭の中を通り過ぎ…

持っていたヘルメットを彼の胸へ叩き付け、自らキスを拒んだ。



身体を彼から離し、彼を睨み付けると…

痛々しいくらい切なさそうな彼の表情を目にした。



「あたしは美智じゃない!」



そんな彼の表情もお構い無しにあたしは口に出してはいけない事を口にしまっていた。



そんな自分にも情けなく、あたしはマンションへ逃げるように走った。



マンションのエレベーターに乗った瞬間、自分が泣いている事に気付き、
あたしは、彼に告白してフラれた時と同じように泣きじゃくった。



部屋に戻っても涙が出る一方で…


その夜はとてもとても悲しく、苦しい夜になった。



あの切なさそうな顔が美智を思っての表情なんだと…実感しながら
あたしは泣き続けた。