あの日はまだ仕事がある武人を残し、

一人自宅までの帰り道をトボトボ歩いて帰った。


マンションの前に着いた時、麻生 健永の「またな」って帰って行く…

後ろ姿が思いだされて、胸が苦しくてまた涙してしまった。



部屋に入って…何もかも現実だったのか…夢だったのか…ぼんやりする。

でも自分が涙する事で現実だと、知らされた。



考えても考えても…美智と麻生 健永の接点は無くて、

お互い自然に名前で呼び合っている仲なのに…


あたしはやっぱり何も知らない。



友達と好きな人の事を疑いたく無い気持ちがあたしの心を重たい物にした。



でも少し救われたのは武人からの思わぬ告白。


あたしを必要としてくれていた武人からの告白。


もし…武人とまた付き合う事になったら楽しいんだろうな。


落ち着くんだろうな。


…なんて麻生 健永の事を考えない様にするあたしの楽な想いだった。



ほんとは…わかってる。


武人はあたしが武人を選ばない事をわかってる。


それでも…あたしに気持ちをぶつけた武人に胸を締め付けられた。