と、うやうやしく頭を下げて見せる動きは、どう見ても愚弄しているようにしか見えない。この王太子が国民から人気がないのがよく解かる、とアンバーは心の中で思った。こんな嫌味な男が王になって、民は幸せに暮らしていけるのか。自分のことしか考えない冷酷な支配者になるような不安しか感じない。


「アンバー様。私は貴女をお救いしたいのです」


(救う?)


思いもかけない言葉を聞いて、アンバーは思わず顔を上げた。
その顎をつかむと、エルミドは吐息まじりにつぶやいた。


「まったく、素晴らしい美しさだ」


強張るアンバーの頬を、冷たい手がやわやわと弄ぶ。


「真珠のような肌…唇は春の花のようで…瞳はエメラルド…。そして金色の髪はまばゆいばかりで…神の力を借りるにふさわしい神々しさだ」


うすら寒さを覚える言葉に、アンバーは視線を床に落とした。


「…ご冗談は大概にしてください。…いったい殿下は私をどうしたいのですか」

「欲しい」

「…?」


エルミドは再び強引にアンバーの顎を引き寄せ、否が応でも自分の顔を見つめるようにした。
整った、でも氷のように冷たげな顔が、酷薄に微笑む。