「よっし。これで安心ね。もう落ちたりしたらダメよ」
巣に戻った雛鳥とその兄弟たちが、喜んで礼をするように口々に鳴き喚く。その無邪気な光景に思わず笑みを漏らして、気を抜いたのが悪かったのかもしれない。
「きゃ!」
不意に体重を預けていた枝が折れて、バランスを失った。
焦る間もなく身体が完全に宙に投げ出される。
地面に打ち付けられる痛みを覚悟して目を閉じた―――が、実際に感じたのは、がしりとしたなにかに受け止められる感覚だった。
「まったく…いつまでもお転婆でいないでください、『聖乙女』様」
硬い胸元にしがみついてそっと見上げると、整った凛々しい―――でもむっと怖い表情を浮かべた顔が視界に入った。
「…ファシアス」
アンバーの幼馴染。
ファシアス・ソロ・イロアス。
名門イロアス家の二男で、美女と名高い母親譲りの綺麗な顔立ちをしているが、無造作にしている黒髪や小傷だらけの肌からは、野性的で健康的な精悍さが感じられた。
なにより、研ぎ澄まされた黒曜石のような漆黒の瞳が印象的で、この国を背負う前途有望な戦士らしい鋭さと輝きを放っていた。
その瞳に真っ直ぐに見つめられ、アンバーはドキドキしながら地面に足を下ろすと礼を言った。
巣に戻った雛鳥とその兄弟たちが、喜んで礼をするように口々に鳴き喚く。その無邪気な光景に思わず笑みを漏らして、気を抜いたのが悪かったのかもしれない。
「きゃ!」
不意に体重を預けていた枝が折れて、バランスを失った。
焦る間もなく身体が完全に宙に投げ出される。
地面に打ち付けられる痛みを覚悟して目を閉じた―――が、実際に感じたのは、がしりとしたなにかに受け止められる感覚だった。
「まったく…いつまでもお転婆でいないでください、『聖乙女』様」
硬い胸元にしがみついてそっと見上げると、整った凛々しい―――でもむっと怖い表情を浮かべた顔が視界に入った。
「…ファシアス」
アンバーの幼馴染。
ファシアス・ソロ・イロアス。
名門イロアス家の二男で、美女と名高い母親譲りの綺麗な顔立ちをしているが、無造作にしている黒髪や小傷だらけの肌からは、野性的で健康的な精悍さが感じられた。
なにより、研ぎ澄まされた黒曜石のような漆黒の瞳が印象的で、この国を背負う前途有望な戦士らしい鋭さと輝きを放っていた。
その瞳に真っ直ぐに見つめられ、アンバーはドキドキしながら地面に足を下ろすと礼を言った。



