突然、視界にくるくる金髪とそばかすだらけの顔が入って来て、ファシアスはぎょっと仰け反った。


「…気になどしてない」

「してましたよー。ちょっと余裕ができるとすーぐ王宮の方をむいてぼーーーっと」

「ぼ、ぼーー??」

「今だけじゃなく、ファシアス様は宮に行った後はいつもそうですよね。まるで心でも奪われたかのようにぼーーーっと」

「は!?ふっざけんなよ、そこまでぼーーーっとなんか」

「そして機嫌が悪い」

「…」


口ごもるファシアスに、少年はそばかすだらけの顔をにっこりとさせた。


「今日もお美しかったですか?アンバー様は」


この有能な側近でもありなんでも話せる親友でもあるアレクには、やはりなにもかもがお見通しだった。
ファシアスは観念して吐息すると頭をかいた。


「……ああ、綺麗だった」

「まーったく、うらやましい限りですねぇ!現『聖乙女』アンバー様と言えば、歴代の中でも一番と呼び声高い美女。名の通りの黄金色の金髪、常春の緑を思わす碧眼…。私も昨年初めてお姿を拝見した時、清楚で儚げな美しさに震えてしまいました」