歌いながら、僕はずっと千夏を探していた。



でも、探しておいて何なんだけれど、実は僕は、正直千夏をそこまであてにしてはいなかった。



だって、今日なんて特に、運営の仕事で忙しいはずだ。
裏方に回っているかもしれないし、貴重な空き時間ができたら、頼斗と校内をまわるかもしれない。


そう、ここに来て言うことじゃないんだろうけど、千夏がこの発表を見ている保証なんてどこにもないのだ。







相手のいない空間で堂々と告白する僕の姿を思い浮かべるだけで恥ずかしくて変になりそうだった。

とりあえず、そんなことを防ぐためにも千夏をこの中から探さなきゃ。
それで、見つからなかったらこの企画は強制終了しよう。タイムリミットはこの曲を歌い終えるまでだ。



僕は歌なんてそっちのけで、暗闇の観客席に目を凝らした。
練習の成果なのか、歌に集中してなくても、歌詞を間違えることはなかった。




しかしその瞬間は突然やってきた。





一番が終わって間奏に入った時、つまり僕のギターのソロパートに入った時、何気なく一瞬、ほんの一瞬客席に目をやった時、千夏と目があったのだ。