それなのにこの今の憂鬱な気持ち。



今だけでも、昨日の気持ちを思い出せ、僕。


そう言い聞かせながら、ステージの方へ歩き出す。




舞台の真ん中に二つ並べられたマイクは僕と栗本さんのものだ。


 
視界が開けると客席から拍手が一度にわき起こる。




演奏が始まったらもう思いとどまることはできない。
リハーサル通りに全部進んでいくのだ。






マイクの前に立つ。

栗本さんと目を合わせる。


ドラムの涼が後ろでばちを鳴らした。




僕は目を閉じた。

作戦の始まりだ。