太陽に手を伸ばしても




「ま、待ってよ!」


急いで追いかけるけど、毎日走り込みをしている野球部員の足には到底追いつけない。


それどころか、行き交う人たちに何度もぶつかって先に進めない。





「もう、何なの…」





智己は、あっという間に人ごみの中に消えていってしまった。

上がる息を整えながら、見知らぬ街の駅前の景色を見渡してみる。



ほんと、何なの、智己。



そもそも、今日は初めからみんなの様子がおかしかった。




私に何か隠してるっていうか、こそこそしてるっていうか、ずっと携帯ばっかいじってて、いつものみんなじゃなかった。

昼ごはん食べてる時も、お土産見てる時も、道を歩いている時も。



せっかくの修学旅行なのに、携帯ばっかりいじって。



急にみんなが一斉に携帯を取り出した時は、さすがに不気味だった。



最初は一体何が起きているのか全然わからなかった。

だけど私は、智己が携帯を見始めると周りも携帯を気にするようになるのを見て確信したんだ。



事の真犯人は、智己だって。





だけど、私は今、もっと重大なことに気づいてしまった。