太陽に手を伸ばしても








ずっと話しかけてたのにもかかわらず、きっぱり無視を決め込んでいた智己が逃げ出したのは、つい数分前。



「ねえ智己!」


「なんだよ、千夏かよ」

私の顔を見るなり、あからさまに嫌そうな顔をする、智己。


 

「さっきから私以外のみんなの携帯に何送ってんの!?」



「は?別に何もしてねえし!」

「ねえ、絶対そんな事ないよね?」



しらばっくれている智己を、なぜか私は力任せに問い詰めてしまう。


そんな事しても、険悪な雰囲気にしかなっていかないってわかっているのに。





「あ」


智己は人ごみの中で急にまた立ち止まって、携帯で何かを打ち始めた。





「…何か言ってよ」

その時だった。




「ほんとごめんな!これしかないんだ!」




急にこっちを向き直った智己は意味のわからないことを言い放って私を軽く突き飛ばしたかと思うと、
人ごみをかき分けて全速力で走り出したのだ。