僕はきっと、自分の感情に押し潰されていた。飼い犬に噛まれる飼い主のように、僕は自分の気持ちをコントロールできなかったから、こんな悲劇を招いたのだ。そんななか、拓也が僕の事を心配して、歩み寄ってくれることで、落ち着くことができた。
「なぁ、次の授業って…」
トイレから帰ってきた拓也が僕の肩に手を置いた。そのまま前後に揺らし、
「おおおーい聞いてんのかぁー?」
こんなやりとりでも、僕は凄く安心して、楽しめる。
 僕を心配してくれる拓也。
 僕も、彼を心配し、頼った。
 彼に捨てられたら、僕の居場所がなくなってしまう。
 これは一般的に、友情と言うのだろう。
 僕はその友情というボンベから、酸素を取り入れる。こうしないと、息ができない。生きられない。海底で、友情を身につけた僕が、静かに息をしている。