あぁ、僕、死んだのか。あれ、足が重い。引っ張られてる。まだ感覚がある。まだ、死んでない。苦しい。さっきまで心地よい場所だったこの池。苦しい。苦しい。死にたいって思ってた。苦しい。苦しい。助けてって思ってた。苦しい。苦しい。死ねば救われると、そう思ってた苦しい。苦しい。
苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい。
「ぷはぁっ」
池からでて、顔をあげる。足に絡まっていた物も今はない。死ぬことへの恐怖、初めて感じた。自分がいなくなる、いや、動かなくなるって、自分でわかった。
 池からあがって、呼吸を整える。肩を上げ下げして、ぜえぜえといっている僕は、釣り上げられた魚みたいだ。自分で面白い冗談を思い付いたと、笑った。
 僕はいま、とんでもない顔をしているだろう。水が入って赤くなった目を見開き、口から水をはきながら笑っている僕を見れば、きっと誰もが逃げ出すだろうな。
 そんなことを思って、ふいに後ろを見た。


 その瞬間、僕は固まった。金色の瞳に、大きな口。体が長くて、大きくて、怖い。だが、僕は不思議なおもちゃを見つけた子供のような好奇心で、もう少しそれに近づいた。そして、わかった。それは、紛れもない 竜 だった。