ー君の声ー

ピピピピピピピピピピピピッ。
うるさい。
私は無造作に目覚まし時計を止める。
時刻、7時20分。
あと10分いけるな…。
あぁ二度寝最高。




ガチャッ…!
「ちょっと!!心南!!!!
今何時だと思ってるの!!!!」
「ん〜〜っ、
ぬぁっっっ!!!!!?!?」
時刻、7時50分。
「ちょっとお母さんなんで起こさないのよ〜!!!!」
「起きないのが悪いんでしょーが!」
へいへい。その通りですよーだ!
心の中で屁理屈をいいながら私は制服に袖を通す。
そして、部屋の鏡の前でセミロングの髪をとかす、
やばいやばいやばいやばい!!
私の皆勤賞がー!!!
そう、私の取り柄といえば小学校から今まで無遅刻無欠席。
成績は別として学校には真面目に通ってる。
そんな、計10年間の努力を無駄にするわけにはいかない。
私は勢いよく玄関を開ける、
「いってきまーーーす!!」
「気をつけるのよ!!」

私の名前は、城崎心南。
今日から高校2年生。
初日から危機に陥ってます。


ふぅー…。
私はいつもの時間の電車にギリギリで乗り込み、人生初の遅刻はまぬがれました。
だけど、
「……っ!!」
なんでいるのーーー!?
その電車には、
中学からずっと片想いしている、
野崎優がいた。


ほんと今は会いたくないNo. 1だよ!
私はもともと、くせ毛なうえにあんなに全力疾走したので髪の毛は大変なことになっている。
あぁ二度寝最低。

私は急いで手鏡とクシをだす。
お願いお願い。
気づかないでね〜。

よし!
こんなもんかな!!
私は今できるセットを手早く済ませた。

えっと、優は…。
あ…。
そこには優と藤乃さんがいた。
彼女は藤乃莉亜。
ヘアメイクはいつも完璧で、
ほんと、マンガやドラマなんかにでてきてもおかしくないくらいの可愛さ。
学校でもお似合いだと有名な優と藤乃さん。
私がどんなに頑張ってもきっと優には釣り合わない。
そんなことわかってる。
そんなことを考えていると、さっきまであんなに慌てていた自分がバカバカしくなる。
優が私のことを気にするわけないのに。
ほんと、バカだな〜、私。
「はぁ〜…。」
「なに朝からため息ついてんの?」
え、この声って、
私は勢いよく顔を上げる、
そこには、
「優!?」
「おはよ。」
「お、おはよう!!!」
私は嬉しさのあまり大声を出してしまった。
「ふっ、元気良すぎ。」
「あ、ご、ごめん。」
「謝ることじゃないだろ。」
そう言うと優は私の横にすわった。
ドキッ…。
やっぱすごくかっこいい。
あぁ、やっぱ好きだなぁ。
優の1つ1つの行動に改めて好きを感じてしまう。
「あれ、優、そういえば藤乃さんは?さっき一緒にいたよね?」
「え?あぁ、知らね。」
「知らないって、」
「ちょっと〜優〜!!置いてかないでよぉ〜。」
そこへタイミングよく藤乃さんが現れた。
「ひどいよぉ、優〜。」
「悪い悪い。」
「むぅ〜…あれ?あなた誰?」
藤乃さんは私に気づき声をかける。
「あ、えっと、城崎心南です。」
「ここなちゃん?へぇ〜、よろしくね!」
「う、うん。」
「あ、そうだ!優、今日ね友達と合コンに行くのぉ。一緒に行こうよぉ〜。」
「興味ない。」
「そんなこと言わないでさぁ、優目当ての子もたくさんいるんだよぉ。」
そう、優はすごくモテる。
髪は透き通るような黒、
顔はとても綺麗で、
いつも無表情なのに、笑うと無邪気で可愛い。
あまり人とは関わろうとしないのに、男女問わずに人気がある。
それは中学からずっと変わらない。
優が好きって女の子もたくさんいた。
ファンクラブもあるっていう噂だ。
そのファンクラブの中では優のことをクール王子と呼んでいるらしい。
「ねぇ〜優ぅ〜。可愛い子いっぱいいるからさぁ。」
『並木駅〜並木駅です。』
「あ、ついた。
心南。いこう。」
ドキッ…、
「うん!」
名前を呼ばれただけなのに心臓が脈打つ。
「ちょっと優〜〜!」
「いいの?藤乃さん。」
「いいよ。ほんとに俺そーゆーの興味ないから。」
優は昔からモテるくせに誰とも付き合わない。
その理由はわからないけど。

学校に着き、上靴に履き替える。
「おい。心南。遅い。」
「え、あ、ごめん!
でも、待ってなくてもいいのに。」
「なんで同じ教室に行くのに別々で行かなきゃなんねーの?」
「え……?」
「お前9組だろ?」
「…え、えーーーーーーー!!!!」

高校2年生。
ついに、ついに…!!!


キーンコーンカーンコーン…、
どうしよう!
すごく嬉しい!!
優と同じクラスなんて!!
3年ではクラス替えがないから2年間も一緒にいられる!!!
私達は一緒に教室に入った、
ガラッ…、
「あ!心南!
おはよう!」
「咲耶ちゃん!?
え、同じクラスなの!?」
「そーみたいだね!」
彼女は橋沢咲耶。
ショートボブの髪型がよく似合う女の子。
高1の時に同じクラスで仲良くなって、今では1番の仲良しだ。
「うわぁ。よかったよ。」
「心南は人見知りだからね!咲耶がいないとだめじゃん?」
「その通りですよぉ〜、」
ほんとにその通りで、慣れれば大丈夫なんだけど初対面の人となると緊張してなにも話せなくなってしまう。
「てかさ!優と同じクラスじゃん!!やったね!!!!」
咲耶は私の好きな人を知っている。
「うん!ほんとにラッキーだよ!」
「チャンスだと思って頑張んなよ〜!」
そう咲耶は冷やかすように言って席に戻った。
でも。ほんとにこれはチャンスだよね。
4年間の片想いに、
ちゃんと決着をつけなくちゃ。
そう心の中で誓った。
「よーし。
ホームルーム始めるぞー。」
新しい担任の先生の声とともに、
私の高校2年生の生活が始まる。

そこには、もちろん優の姿が、
私の席は窓側の一番後ろ。
優は廊下側の一番前の席。
その距離に少し不安になってしまう。
でも、決めたんだ、
優に告白をする!!

心の中で片想いの音が溢れていた。