「…そっか、セツナはセツナも覚えてないんだね……全然わからなかった、ごめんね」 だから頷くだけでいいのに。 彼は首を縦に振ってくれたらそれでいいのに。どうしてあなたは、哀しそうな顔をしてしまうの。 それでも揺らぐ瞳は意志を持ったように私をじっと見つめてくる。 混じりあった視線が解けることは、もうなかった。彼は私に触れるように優しく語りかける。 「セツナじゃなくてもいい。俺は君自身が好きだから。名前なんてなんだっていいんだよ」 「名前、なんていうの?教えて」