今宵の月のように

「宮本さん、おかえりなさい」

頭をなでながらそう言った私に、
「約束を覚えていてくれたんだな…」

宮本さんは呟くように言って、洟をすすった。

それから、
「ただいま、こより」

宮本さんは返事をした。

「最後…」

そう言った宮本さんに、私は頭をなでていた手を離した。

宮本さんはズボンのポケットに手を入れると、そこから小さな箱を取り出した。

「俺からも約束してただろ?」

宮本さんはそう言って箱を開けて、私に見せてきた。

「えっ…?」

そこに入っていたそれに、私は驚いて宮本さんの顔を見つめた。

「左手の薬指は、俺が生きて戻ってきた時のために取っておけって」

宮本さんはそう言ってフッと笑った。