「えっ、そうなんですか?」

思わず私が聞き返したら、
「そうらしい」
と、宮本さんが言った。

「らしい、って…」

私は何も返すことができなかった。

「ちゃんと言うからな」

宮本さんが言った。

「誕生日当日に“おめでとう”って、ちゃんと言うからな」

宮本さんは私に宣言をした。

「ちゃんと、って…」

まるでその日まで生きている保証はないと言うような言い方だ。

「そんなこと、言わないでくださいよ…」

私の唇から思わずその言葉がこぼれ落ちた。

「さよならなんて言いたくないです」

私が続けて言ったら、
「必ず戻ってくるから」

宮本さんが言った。

「お前に“さよなら”を言ってくれなんて、思ってない」

宮本さんはそう言って、私の頬に唇を落とした。