今宵の月のように

ようやく自分の仕事に取りかかれることができたのは、午後になってからだった。

あれやこれやと口々に手伝えだの何だのと雑用を頼まれたせいで、自分のやるべき仕事が遅くなってしまった。

定時を過ぎたと言うのに、仕事はまだ終わらない。

「お疲れ様でーす」

「はい、お疲れ様でーす」

会社に残っているのはとうとう私だけになってしまった。

腕時計に視線を向けると、8時を過ぎていた。

もちろん、朝ではなく夜の8時である。

「あー、もういつになったら終わるんだろう…」

ぼやきながらキーボードをたたいて終わるんだったら、誰だって苦労しない。

ようやく終わることができたのは、9時を過ぎてからだった。

資料の保存を済ませて、ちゃんと保存ができたかどうかの確認をすると、上司のパソコンに送った。

それが終わるとタイムカードを押して、会社を後にした。