翌朝。二人よりも早く起きて牛舎の掃除を始めた。防寒具を着ていても寒さは身に染みる。一部機械化が進んでいるとはいえ、重労働だ。でもこの仕事が嫌いなわけではない。牛たちはかわいいし白川牧場の牛乳は世界一美味しい。
「……美鶴? 早いな」
「おはよう! お父さん、お母さん」
 美鶴が笑顔を見せると明彦はどこか安堵した表情で髭を撫でた。瑤子も普段通りだ。
これでいい。このままでいい。美鶴は小さくつぶやいた。