7.サイカイ
次の休日に美鶴は透と会う約束をした。
指定された時間に区役所の前で待っていると目の前に車が停車する。透は運転席から降りてくると助手席のドアを開けた。
「おはよう美鶴。乗って」
「離婚届を出しに行くんじゃないんですか?」
「……もちろん、分かってる。だがその前に連れていきたいことがあるんだ。美鶴が行きたがっていた場所だよ」
透はあえて行き先を告げなかった。
“行きたがっていた場所”で想像がつくのはアフタヌーンティーだろうか。診療所で盛り上がったお洒落なホテルでの華やかなティータイム。
――いまさら思い出を作っても空しいだけなのに……。
美鶴はただ黙って車窓を眺めていた。車は都心のビル群を抜け、首都高に乗る。いったいどこへ向かってるのかと不安になったころ、車は停車した。
「着いたぞ」
そう言われて美鶴は車を降りる。山の中腹の切り開かれた場所。眼下には海とヨットハーバーが見えた。心地よい海風と鳥のさえずりが聞こえる。
透はトランクから花束を取り出した。
「……透さんここは?」
「ついておいで」
美鶴は黙ってついてく。庭園に見えたそこには墓石がいくつも並んでいた。墓地なのだろう。
次の休日に美鶴は透と会う約束をした。
指定された時間に区役所の前で待っていると目の前に車が停車する。透は運転席から降りてくると助手席のドアを開けた。
「おはよう美鶴。乗って」
「離婚届を出しに行くんじゃないんですか?」
「……もちろん、分かってる。だがその前に連れていきたいことがあるんだ。美鶴が行きたがっていた場所だよ」
透はあえて行き先を告げなかった。
“行きたがっていた場所”で想像がつくのはアフタヌーンティーだろうか。診療所で盛り上がったお洒落なホテルでの華やかなティータイム。
――いまさら思い出を作っても空しいだけなのに……。
美鶴はただ黙って車窓を眺めていた。車は都心のビル群を抜け、首都高に乗る。いったいどこへ向かってるのかと不安になったころ、車は停車した。
「着いたぞ」
そう言われて美鶴は車を降りる。山の中腹の切り開かれた場所。眼下には海とヨットハーバーが見えた。心地よい海風と鳥のさえずりが聞こえる。
透はトランクから花束を取り出した。
「……透さんここは?」
「ついておいで」
美鶴は黙ってついてく。庭園に見えたそこには墓石がいくつも並んでいた。墓地なのだろう。



