凄腕救急医は離婚予定の契約妻を湧き立つ情熱愛で離さない

町田のアパートまで駅から徒歩十分程歩いた。途中にはスパーやドラッグストアがあり買い物には困らなそうだ。
「ここがうち」
築二十年の二階建てのアパート。玄関を入ると両側にユニットバスとキッチン。五畳の部屋にロフトがついている。シンプルでテレビもない部屋。ラグとテーブル。フロアソファが置かれている。
「私はロフトで寝てるの。美鶴は下でいい?」
「もちろん。ありがとう」
「美鶴は夕ご飯食べた?」
「実はまだ……」
 正直食事をとる気にもなれなかったのだが、町田は「すぐできるから」といって冷凍ご飯でトマトリゾットを作ってくれた。
「食べてみて」
「いただきます。んん、おいしい……お店の味」
「でしょう! イタリアンレストランでバイトしてたことがあるんだ。パスタもいろいろ作れるよ」
「そうなの? 凄いね!」
 町田といろいろな話をしてると透のことを考えなくて済む。透はまだ仕事中だろう。離婚届を見つけたら、悲しむだろうか。それとも怒るだろうか。連絡がくるのが怖くてスマホの電源は切ってしまった。次の透と顔を合わせるとすれば二日後。透の病院への出勤日だ。