凄腕救急医は離婚予定の契約妻を湧き立つ情熱愛で離さない

「これからどうしよう……」
 幸い仕事はあるが住むところがない。部屋を借りるまではホテルに泊まるしかないが、どれくらい出費がかさむのだろう。ふらふらと行く当てもなく繁華街を彷徨う。
「漫画喫茶……」
 美鶴は路上にある料金が書かれた看板をじっと見つめた。ドリンクバーが無料でシャワーも浴びることが出来ようだ。料金もそれほど高くはない。
「志木さん?」
 顔をあげると町田が訝しげな表情でこちらを見ていた。
「町田さん……」
「なにしてるの? そんな大荷物持って。旅行?な訳ないか。明日仕事だものね」
「実は泊まるところを探してて」
 美鶴が答えると町田はさらに首をかしげる。
「はぁ? 家出?喧嘩でもした?」
「はい。というか、離婚……」
「離婚!?」
 余程驚いたのか町田は声を張り上げる。
「どうして離婚なんて……それで志木先生に家を追い出されたの?」
 美鶴は首を横に振った。
「追い出されたというわけではないんですが、いろいろと事情があって……」
「事情ねぇ……うちに来る?困ってるんでしょ?」
「いえ。そんなご迷惑はかけられません……」
「そうやってひとりで抱え込んでどうするの。どうにもならないこともあるでしょうに」
 そう町田に言われ美鶴はハッとする。
――私、透さんと同じことをしている。
 迷惑をかけたくなくて一人で抱え込んで誰も寄せ付けないようにして。でも結局ひとりになって困り果ててる。