風呂から上がりリビングへ戻ると透はハーブティーを入れてくれていた。カモミールのいい香りがする。
「ゆっくりできたか?」
「はい。片づけもありがとうございました。カモミールティーですか?」
「そうだよ。お茶でよかったかな?」
「もちろんです」
座るように促されて美鶴はソファーに座った。ひとり分空けるようにして透が横に座る。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
美鶴はティーカップを透から受け取るとそっと口を付けた。程よい温度のカモミールティーは優しく体に沁み込んでいくようだ。
「美味しいです」
「よかった。俺が小さい頃、他界した母がよく淹れてくれたんだよ」
「他界した……?」
初めて聞く話だった。
「美鶴が会った母は父の後妻なんだ。俺が十五歳の時、母が亡くなってすぐに家にやってきた継母は六歳になる息子を連れてきた。もちろん父の子だ」
透はまるで忘れていた過去を思い出すかのように実母の死や弟中心の家庭に自分の居場所を見つけられなかったことなどをぽつぽつと語った。
「そうだったんですね」
美鶴はどこか自分の半生に似ていると思った。そして透の心の痛みが手に取るように分かった。
「その弟は来年大学を卒業する。継母は弟を志木家の跡取りに据えようとするだろう。生意気な長男より次男の方がかわいいと父も思っているようだし」
「透さんはそれでいいんですか?」
「もちろん。家業には興味はない。医者の仕事のほうが性にあってる。今日久しぶりに現場に出てみてよくわかった」
透の表情から今日一日がとても充実していたのだと分かる。
「それに」と透は言って美鶴を見つめた。
「ゆっくりできたか?」
「はい。片づけもありがとうございました。カモミールティーですか?」
「そうだよ。お茶でよかったかな?」
「もちろんです」
座るように促されて美鶴はソファーに座った。ひとり分空けるようにして透が横に座る。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
美鶴はティーカップを透から受け取るとそっと口を付けた。程よい温度のカモミールティーは優しく体に沁み込んでいくようだ。
「美味しいです」
「よかった。俺が小さい頃、他界した母がよく淹れてくれたんだよ」
「他界した……?」
初めて聞く話だった。
「美鶴が会った母は父の後妻なんだ。俺が十五歳の時、母が亡くなってすぐに家にやってきた継母は六歳になる息子を連れてきた。もちろん父の子だ」
透はまるで忘れていた過去を思い出すかのように実母の死や弟中心の家庭に自分の居場所を見つけられなかったことなどをぽつぽつと語った。
「そうだったんですね」
美鶴はどこか自分の半生に似ていると思った。そして透の心の痛みが手に取るように分かった。
「その弟は来年大学を卒業する。継母は弟を志木家の跡取りに据えようとするだろう。生意気な長男より次男の方がかわいいと父も思っているようだし」
「透さんはそれでいいんですか?」
「もちろん。家業には興味はない。医者の仕事のほうが性にあってる。今日久しぶりに現場に出てみてよくわかった」
透の表情から今日一日がとても充実していたのだと分かる。
「それに」と透は言って美鶴を見つめた。


