凄腕救急医は離婚予定の契約妻を湧き立つ情熱愛で離さない

 十七時半を過ぎた頃、美鶴はやり残した仕事がないか確認すると夜勤できた同僚へ昼間の状況を申し送った。ナースステーションで「お先に失礼します」と声をかけ更衣室へ向かう。ロッカーに置いておいたバッグからスマホを取り出してみると透からメッセージが届いていた。――駐車場で待ってる。
送られたのは十五分前。急いで着替えて通用口に向かうと警備員に職員専用の駐車場の場所を聞いた。美鶴は建物の裏手側に回る。透の車を見つけると駆け寄って助手席のドアを開けた。
「遅くなってすみません」
「急いできたのか? 息が上がってる」
「だって、透さんを待たせたくなかったから。それに聞きたいことがたくさんあって」
 昼以降、業務中に余計なことを考えないようにすることのほうが難しかった。
「そうだな、俺も話したい……。その前に夕飯どうする? 何処かで食べて帰ろうか?」
「はい! あ、でも透さんお疲れじゃないですか?それに会社のお仕事だって沢山あるでしょう?」
「仕事はないわけじゃないが……」
「もしよければお家で食べません? 私が作ります。冷蔵庫に食材もあるし」
 晩御飯はほぼ毎日自炊だ。今日はご飯を炊いて生姜焼きを作ろうと思っていた。
「生姜焼き、好きですか?」
「好きだよ。でもいいのか? 美鶴も働いて疲れているだろうに」
「いつも作っているから平気ですよ」
 家に帰ると透へ先に風呂へ入るように勧めた。その間に美鶴は夕食の準備を始める。ご飯を高速で炊き、生姜をすりおろす。同時に味噌汁も作った。どれも庶民的な料理だが透は喜んでくれるだろうか。