「先生は、いつぶりの復帰なんですか?」
「二年になりますね。非常勤でたまに仕事をしていたから感覚は鈍っていないと思いますが」
聞き慣れた声に美鶴は声の主を盗み見る。人の陰になってよく見えないがそこにいたのは透によく似た男性で、濃紺のスクラブを身にまとっていた。
――透さん? の訳ないか。でも、とてもよく似ている。
透は経営者で多忙を極めている。間違っても病院で医者の格好をしているはずがない。
エレベーターが一階に到着すると医師たちは先に降りて行った。美鶴もエレベーターを降りて看護師と共に患者を送り届けると病棟へと戻った。それから午前中はあわただしく仕事をこなしていく。休憩時間になり、美鶴はひとりで食堂へと向かった。
四人掛けの席で日替わり定食を食べ始める。少しして目の前の椅子が引かれた。顔をあげるとそこには仲村がいて「ここいい?」と聞いてくる。
「他の席も空いてますよ」
昼時を過ぎた食堂は人も少なくテーブルはいくつも空席がある。
「ひとりで食べるのって寂しくない?」
「さびしくありません」
断ったつもりだったが仲村はすました顔で目の前に座った。美鶴は困惑した表情を浮かべる。こんなところを病棟の看護師に見られたらさらに敵意を向けられてしまいそうだ。
「そんな顔しないでよ」
「すみません。先生が気にかけてくれることを好ましく思わない人も多いみたいなので……」
「誰かに何か言われた? 僕の美鶴ちゃんをいじめないで欲しいな~」
「私は先生のモノではありませんよ」
「あれ違った?」
笑顔だった仲村の笑顔が陰った。その視線をたどると、美鶴の斜め後ろに注がれている。
「二年になりますね。非常勤でたまに仕事をしていたから感覚は鈍っていないと思いますが」
聞き慣れた声に美鶴は声の主を盗み見る。人の陰になってよく見えないがそこにいたのは透によく似た男性で、濃紺のスクラブを身にまとっていた。
――透さん? の訳ないか。でも、とてもよく似ている。
透は経営者で多忙を極めている。間違っても病院で医者の格好をしているはずがない。
エレベーターが一階に到着すると医師たちは先に降りて行った。美鶴もエレベーターを降りて看護師と共に患者を送り届けると病棟へと戻った。それから午前中はあわただしく仕事をこなしていく。休憩時間になり、美鶴はひとりで食堂へと向かった。
四人掛けの席で日替わり定食を食べ始める。少しして目の前の椅子が引かれた。顔をあげるとそこには仲村がいて「ここいい?」と聞いてくる。
「他の席も空いてますよ」
昼時を過ぎた食堂は人も少なくテーブルはいくつも空席がある。
「ひとりで食べるのって寂しくない?」
「さびしくありません」
断ったつもりだったが仲村はすました顔で目の前に座った。美鶴は困惑した表情を浮かべる。こんなところを病棟の看護師に見られたらさらに敵意を向けられてしまいそうだ。
「そんな顔しないでよ」
「すみません。先生が気にかけてくれることを好ましく思わない人も多いみたいなので……」
「誰かに何か言われた? 僕の美鶴ちゃんをいじめないで欲しいな~」
「私は先生のモノではありませんよ」
「あれ違った?」
笑顔だった仲村の笑顔が陰った。その視線をたどると、美鶴の斜め後ろに注がれている。



