凄腕救急医は離婚予定の契約妻を湧き立つ情熱愛で離さない

「へえ、そうなんだ。じゃあまた別の日に誘うね。気を付けて帰って」
 仲村と別れ、透に電話を掛ける。指示された場所で待っていると程なくして一台の車が目の前に停まり運転席の窓が降りた。
「透さん? 早かったですね」
「美鶴から連絡があったらすぐ出るつもりでいたからな。乗って」
 美鶴は助手席に乗り込んだ。普段は運転手付きの車で移動していたので透の運転する車に乗るのはこれが初めてだ。
「久しぶりだけど安全運転で行くから、安心して」
「はい」
 素直に頷くと透は苦笑いを浮かべた。
「笑って欲しかったんだけどな。まあ、そういう真面目なところが美鶴のいいところでもあるけどな」
「……あ。そういうことですね」
 透は事故後に運転を控えていたのだろう。こちらに戻ってから運転する姿は一度も見ていなかった。
「怖くなったりはしないですか?」
「雪道はこりごりだけど、美鶴と二人でドライブしたかったから」
 それから透はあの日の出来事を話して聞かせてくれた。美鶴にとって事後以前の彼の状況を聞くのは初めてだった。
「知り合いに頼まれて仕事の手伝いに行ってたんだ。あの日はほとんど寝る時間が取れなくて、でも翌日には東京に帰らなければならなかったからあんな吹雪の中運転するしかなかった。起こるべくして起こった事故だと思うよ。自業自得とはいえ、たくさんの人に迷惑をかけてしまったな」
「そうだったんですね。でも本当に無事でよかったです」
「でもあの事故がなければ美鶴と出会えなかったんだから、悪いことばかりでもなかったとは思っている」
「私も同じです。不謹慎かもしれませんが、あの事故がなければ透さんと出会うことなんて絶対になかった。私が今、こうして東京にいられるのも透さんのおかげです」
 だからこれ以上のことは求めてはいかない。そう美鶴は自分を戒める。