凄腕救急医は離婚予定の契約妻を湧き立つ情熱愛で離さない

「ここです」
「ええっ、美鶴ちゃんここに住んでるの?」
 仲村は驚いたようにマンションを見上げた。
「だってここの家賃……」と言いかけた時、エントランスから人が出てくるのが見えた。透だった。
「先生。今日はいろいろとありがとうございました」
美鶴は仲村に礼をいい頭を下げると、小走りで透のもとへ駆け寄った。
「透さん? どうしたんですか」
「美鶴が遅いから迎えに行こうと思って出てきた。誰かと一緒だった?」
 透は遠目で仲村を見つけると怪訝そうに尋ねる。美鶴は慌てて説明した。
「研修医の仲村先生です。夜道が危ないからって送ってくださったんです」
「医者? 俺を呼べばよかったのに。近くで飲んでたんだろう?」
「はい。でも透さんはお仕事で忙しいし、迎えに来てもらうなんてできません」
 美鶴は小さく頭を振った。すると透はどこか寂しげに眉を下げた。
「……そうだな。確かに仕事で行けないこともあるけど、迎えの車を手配することはできるから。だから頼るならほかの男じゃなくて俺を頼って。いい?」
「はい」
「さあ、中へ入ろう。体冷えてない?」
 いいながら透は美鶴の手を握った。
「あの、透さん。手……」
美鶴は戸惑いを隠せなかった。透に触れられたことは数えるほど少ないのだ。
「酔っているだろ? 転ばないようにちゃんとつないでいて」
冷えた指先を温かくて大きな透の手が包む。それがあまりにも心地よくて美鶴はその手を握り返した。