凄腕救急医は離婚予定の契約妻を湧き立つ情熱愛で離さない

 医師たちは今日急変した患者の緊急カテーテル治療にもかかわったという。
「今日は本当にすみませんでした」
 恐縮する美鶴に医師たちは優しく声を掛けてくれる。
「気にすんなって。これで仕事辞めたりしないでくれよな!」
「そうそう。師長にいびられたらいつでも相談して、助けるから」
 二人の若手医師から励まされ、美鶴はいたたまれない気持ちなる。何かを察したのか正面に座った仲村が割って入った。
「お二人とも、この話はもうおしまいで! 歓迎会なんだし楽しく飲みましょ!」
「ありがとうございます」
 美鶴が礼を言うと仲村は左目を軽く瞑った。
歓迎会に医師が参加したことで病院や病棟のいろいろな話を聞くことができた。他の同僚たちも興味津々と言った表情で話を聞いていた。
二十二時。ラストオーダーになり、美鶴の歓迎会はお開きとなる。町田が言った通り二人の医師が会計を持ってくれた。仲村は研修医だからということで五千円だけ支払ったようだ。
町田は江口に介抱されながらタクシーに乗せられていた。いつも飲み過ぎるらしいと教えてくれたのは同僚の橋口さんだ。
「じゃあ、私は主人が迎えに来るので。志木さんは?」
「私は歩いて帰ります。今日はありがとうございました」
 礼を言い、美鶴は歩きはじめる。少しして仲村が追いかけてきた。他の医師はタクシーに乗せたのだという。
「ねえ、もう帰るの?」
「はい」
「明日は休みでしょ? もう一杯だけ付き合ってよ」
「……でも」
「今日のお礼のつもりでさ」
 そう言われてしまえば断れない。仲村には恩を感じているから。